AIのケアプラン作成で、ケアマネの仕事はどうなる?

ケアマネの今後

本稿は、AI技術の急速な発展がケアマネジメント業務に与えうる影響について、複数のシナリオを検討するものです。提示する予測は可能性の一つであり、確定的な未来ではありません。読者には批判的視点を持って、自身のキャリア戦略を考える材料として頂けたらと思います。キャリアの重要な決定をされる際は、職場の上司やキャリア支援機関、必要に応じて専門家とも相談しながら慎重にご判断ください。


なぜ「自分たちは大丈夫」と思ってしまうのか

私たちの脳には、予期せぬ事態が起きた際、それを「異常ではない」と思い込もうとする心理機能が備わっています。これが「正常性バイアス」です。

ケアマネジャーの中には、「AIが導入されても、最後は人間が必要だ」「ケアマネジャーの相談援助技術はAIには代替できない」という見方が根強いです。これらの意見には一定の真実が含まれています。しかし同時に政策動向や、AI技術などの実証データを見ると、技術革新が業務の在り方を根本から変える可能性も示唆されています。

本稿では、AIがケアプラン作成に導入された場合、ケアマネジャーという職種にどのような変化が起こりうるのか、仮説を提示してそのメカニズムと対応策を検討します。


専門職からシステムへ置換

歴史が示す教訓

多くのケアマネジャーがAIの影響を限定的と考える理由の一つは、「対人援助の本質は心にある」という専門職としての自負があります。この主張は間違ってはいません。ただし、歴史を振り返ると、「心」や「経験」といった定性的要素は、多くの産業で「効率」と「科学的根拠」に基づくシステムに置き換えられてきた傾向があります。

かつて、証券取引や会計業務においても、専門家の経験と勘が重視されていました。しかし近年、定型的な判断業務を中心に、アルゴリズムによる自動化が進んでいます。介護・福祉分野においても、定型化可能な業務領域についてはAI活用が進む可能性があります。(ただし、対人援助の複雑性や個別性を考えると、単純な比較は慎重になるべきです。)

技術の発展と社会の選択

厚生労働省が推進する「科学的介護情報システム(LIFE)」は、介護の質の向上を目的としており。その進展は、ケアマネジメントを「暗黙知(個人の経験)」から「形式知(データ)」へと変換させる動きと考えれます。この流れがどこまで進むかは、技術の発展と社会の選択次第ですが、無視できないと思います。


「対人援助はAIに代替できない」という議論の再燃

検討すべき論点3つ

「AIには心がない」「利用者の気持ちに寄り添えない」「対人援助はAIには無理だ」という反論は、専門職として当然の主張です。利用者や家族との信頼関係構築、複雑な家族背景への配慮、微妙な感情の機微を読み取る能力などは、人間の強みです。

ただし、この議論には検討すべき論点が3つあります。

第1に、業務の分離の可能性です。
ケアプランの作成と、対人援助は完全に一体ではありません。AIがプラン作成を担い、人間は対人調整に特化するというハイブリッドモデルも考えられます。この場合、必要な人員数がどう変化するかは、運用次第です。

第2に、対人援助能力の専有性です。
対人援助のスキルを持つのはケアマネジャーだけではありません。介護福祉士、社会福祉士、看護師など、他の専門職も対人援助の訓練を受けています。ケアプラン作成という独自業務の重要性が相対的に低下すれば、独立した職種としての位置づけが変わる可能性があります。

第3に、AI技術の進化です。
近年の対話型AI(LLM)は、一定の共感的応答が可能となり、24時間対応できる利点があります。ただし、認知症や難聴のある高齢者とのコミュニケーションにおいて、人間の柔軟な対応力を完全に代替できるかは、まだ検証段階です。技術の限界と可能性の両面を見据える必要があります。


実証実験が示唆すること

AIがケアマネジャーの業務に与える影響を考える上で、福岡市が実施した「AIを活用したケアプラン作成支援(CPA:Care Plan Assistant)」の実証実験(詳細は福岡市公式サイト参照)は重要な事例です。

この実験では、以下のような結果が報告されています:

  • 作成時間の短縮: 従来、数時間を要していたアセスメントからプラン原案の作成プロセスが効率化されました。
  • 根拠の提示: AIは過去の事例データや医学的エビデンスから、サービス選択の根拠を提示します。

福岡市の報告書(詳細は福岡市公式サイト参照)では、AIがケアマネジャーの判断を「補完」するとされています。ただし、AI依存度が高まれば、ケアマネジャーの役割が「AI案の検証・承認」へとシフトしていくシナリオも1つの可能性として考える事ができます


(この段階では、AIはあくまで「支援ツール」です。しかし、技術が進化し、AIの判断精度が向上すれば、専門職としての価値がどう評価されるかは、重要な問いとなります。実際にどの程度の裁量が残るかは、今後の運用次第と考えられます。)


自律型AIが提起すること

福岡市の事例(詳細は福岡市公式サイト参照)が「支援」であったのに対して、株式会社シーディーアイ(CDI)が提供する自律型AI「SOIN(ソワン)」は、より自動化の度合いが高いとされます。

十数項目の入力で3分作成

CDIが公表している情報によれば、同社のAI「SOIN(ソワン)」は、アセスメントの十数項目入力により要支援の帳票を約3分で作成可能としています。(ただし、この数値は最適条件下でのデモンストレーションな可能性もあり、実際の現場での再現性については、より広範な検証が必要とされます。)

「アセスメント入力自動補完機能」と「介護予防サービス・支援計画書の自動作成機能」により、事務作業の大幅な効率化が期待されます。

一見すると「業務負担の軽減」という利点に見えます。しかし、一般論として、1件のプラン作成時間が劇的に短縮されれば、一人当たりの担当件数を増やせる見方も1つの可能性として考える事ができます。これは人員配置の最適化につながる一方で、雇用への影響も懸念されます。


厚生労働省「LIFE」と「科学的介護」が目指す方向性

AI導入の背後には、国家戦略としての「科学的介護情報システム(LIFE)」の普及があります。

項目従来のケアマネジメントAI・LIFE時代の可能性
判断の根拠個人の経験、直感蓄積されたビッグデータエビデンス
プランの質担当者によって差が生じる標準化の可能性/最適解が提示
作成時間数日〜1週間(面談・入力含む)大幅短縮の可能性
評価プロセス(寄り添い)重視アウトカム(自立支援の結果)も重視

厚生労働省の方針は、ケアプランの「標準化」と「質の底上げ」です。誰が作っても一定の質を担保できるシステムが完成すれば、専門職の役割はどう変化するのでしょうか。これは技術的な問題だけでなく、社会がケアマジャーに何を求めるかという価値観の問題につながる1つのシナリオとも考える事ができます。


「対人スキル」さえもAIに代替される可能性は?

(AIの強み:データと客観性)

AIがケアマネジメントにおいて持つ可能性のある強みを整理しておきましょう。

圧倒的な情報量と「エビデンス」の精度

一人のケアマネジャーが経験できる症例数には限界があります。一方、AIは全国から集積された「LIFE(科学的介護情報システム)」は介護の質の向上を目的としており、データを活用することで特定の条件(年齢、疾患、生活状況など)に対し、過去にどのような介入が効果的だったか、統計的根拠に基づいたプランの提案が理論上は可能です。

属人性の排除と公平性の担保

ケアマネジメントにおいて、担当者の経験や地域資源への精通度によって、プラン内容に差が生じることは避けられません。限定的な事例でありますが、一部報道では特定事業所への不適切な誘導事例が取り上げられることもあります。AIの客観性がこうした課題の解決策・公正さとして期待される面もあります。(ただし、地域の実情に応じた柔軟な判断は、依然として人間の専門性が求められる領域です。)

事務作業の自動化

一部の業務実態調査によれば、ケアマネジャーの業務時間の3〜5割程度が事務作業に費やされているとの報告があります。AIによるこの部分の効率化は、理論上は大きな時間創出につながる可能性があります。

バイアスの最小化

人間である以上、無意識のバイアスや疲労による判断のブレは完全には排除できません。AIは感情の影響を受けずに常に一定の基準で判断を行う点で、補完的な役割を果たす可能性があります。

多言語・多文化対応

外国人介護職や外国籍の利用者が増える中、AIは言語の壁を低減する可能性があります。

これらの強みは、AIの「可能性」です。(同時に、AIには限界もあります。個別性の高い状況判断、倫理的ジレンマへの対応、信頼関係の構築などは、現時点で人間の専門性が不可欠な領域です)。


財政的圧力及び、「セルフケアマネジメント」の台頭

ケアマネジャーに支払われる「居宅介護支援費」は、利用者の自己負担がゼロ(2025年現在:全額保険料と公費)という特殊な構造だ。

国の財政が逼迫する中、AIが同等以上のプランを作成できる可能性が示されれば、費用対効果の観点から制度見直しの議論が起こる可能性も、将来的なシナリオの一つとして考えられます。

スマートフォンアプリで「今の状態」を入力し、AIが最適なプランを提示するような「セルフケアマネジメント支援システム」が実用化されれば、ケアマネジャーとしての役割や現在の仕組みがどう変化するかは注視すべき点です。(2025年現在:仮説・シナリオの1つです)


AIが予想する仮説・シナリオの1つ

段階的な変化の可能性

AIの導入進展により、想定されるシナリオの一つとして、以下のような段階的変化が考えられます。(これは複数の可能性の中の一つで、様々な要因によって、実際の展開は大きく異なる可能性があります。)

フェーズ1:ツールの導入(現在〜2026年頃)

事務作業の効率化としてAIが導入される段階。業務負担が軽減され、「楽になった」と感じる時期。(仮説・シナリオです。)

フェーズ2:報酬体系の改定

AI作成のプランと人間作成のプランで、AIの方が「自立支援の結果が良い」というデータが蓄積される。AIプラン作成の加算が下がり、逆に「AIを利用しないプラン」は不適切として査定の対象になる。
(仮説・シナリオであり、厚生労働省の公式見解との乖離があります。現時点では、このような比較データは存在しません。)

フェーズ3:人員基準の見直し検討

AI活用を前提とした担当件数の上限緩和が議論される可能性があり、現在の上限が引き上げられる方向で議論される可能性も否定はできません。(仮説・シナリオです。)
【別の可能性】 利用者の権利擁護の観点から、むしろ担当件数の上限が厳格化される可能性もあります。

フェーズ4:役割の再定義

プラン作成の一部がシステム化され、ケアマネジャーの役割が「検証・調整・対人支援」に特化していく可能性。他の専門職(社会福祉士、介護福祉士など)との役割の重複が議論される段階。(仮説・シナリオです。)
【別の可能性】 AIを活用した「スーパーケアマネジャー」として、より高度な専門性が求められる方向に進化する可能性もあります。

フェーズ5:制度の抜本的見直し

セルフケアマネジメント支援システムの普及により、制度全体の在り方が議論される段階。(仮説・シナリオです。)
【別の可能性】 AIの限界が明確になり、人間の専門性の重要性が再認識される可能性もあります。


変化を機会に変える

ここまでの話は、不安を煽るためのものではありません。変化の可能性を認識し、先手を打つための材料となります。

ケアマネジャーとしての専門性を深めることは、引き続き重要なキャリア戦略です。同時に、変化の激しい時代において、複数のスキルや知識領域を持つことは、多くの専門職に共通する『リスク分散』の考え方として有効です。これはケアマネジャーの価値を否定するものではなく、むしろ専門性に加えて選択肢の幅を広げるという、補完的なアプローチと言えます。

戦略① 資格とスキルの複線化

ケアマネジャー資格に加え、複数の資格とスキルを組み合わせたポートフォリオ型のキャリアも、選択肢の一つとして検討する価値があります。

  • 社会福祉士や精神保健福祉士の資格を追加取得すれば、相談支援やソーシャルワークの領域に活動範囲を広げられる
  • ファイナンシャルプランナーの資格があれば、高齢者の資産管理や相続相談にも対応できる
  • ITスキルを磨けば、介護テクノロジーの導入支援やデータ分析などの新しい役割を担える

戦略② 「相談援助技術」の応用展開

ケアマネジャーとして培った「傾聴力」「調整力」は、介護保険制度の外側でも価値があります。

  • 自費のシニアコンサルティング: 制度に縛られない柔軟な支援
  • コーチング・メンタルケア: 介護家族や現役介護職員向けのメンタルサポート
  • 情報発信・ライティング: 現場を知る専門家としての一次情報の発信

戦略③ 収入源の分散

一つの法人からの給与のみに依存せず、複数の収入源を持つことは、変化への備えとなる。副業は単なる収入補完ではなく、スキルの実験場でもあります。

戦略④ 介護業界内での転職視野

介護業界内でも、AI化の影響を受けにくい職種は存在します。直接的な身体介護を行う介護福祉士、医療的ケアを担う看護師、リハビリを提供する理学療法士などは、当面AIによる代替が困難です。ケアマネジャーとしての経験は、これらの職種への転職においても評価されます。介護現場の全体像を理解し、多職種連携の経験を持つことは、どの職種でも強みになります。


結論:変化を恐れず、変化を先取りする

ケアマネジャーという職種の役割が、今後大きく変容していく可能性があります。ただし、その変化の方向性は一つではありません。AIとの協働により、より本質的な対人支援に専念できる未来もあれば、役割の縮小というシナリオもあります。どの未来が実現するかは、技術の発展だけでなく、私たち自身の選択と行動にも左右されます。

「自分は大丈夫」と思い込むことにはリスクがあります。同時に、過度な悲観も不要です。重要なのは、現実を直視し、柔軟に対応することです。

転職の準備を始めること、副業で収入源を多様化すること、新しいスキルを学ぶこと――これらは全て、不確実な未来に対する保険です。変化を先取りし、自身の強みを再定義することで、AI時代においても価値を発揮し続けることは十分に可能です。

ケアマネジャーとしてのキャリアに誇りを持ちながらも、それに固執しない柔軟さが求められています。あなたの次の一歩が、10年後の自分を支えるかもしれないです。今日から、準備を始めましょう。

【免責事項と注意喚起】 本記事は「一般的な情報や仮説」と「筆者の個人的な経験・感想」を含みます。収入や法令の扱いについては「特定の市場調査に基づく傾向」として読み、必要に応じ専門家とご相談下さい。あなたが安心して次の一歩を踏み出せることを心から応援しています。


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