【ケアマネ向け】家族の過剰要求・業務外依頼への断り方ガイド|そのまま使える説明文例と代替提案の技術

利用者・家族

「また無理なことを頼まれた…でも、どう断ればいいか分からない」——そんな夜、このページを開いてくれているあなたへ。

ケアマネジャーとして働いていると、家族からの”善意の過剰要求”や、制度外の依頼に心が折れそうになる場面は、本当に多いですよね。「断ったら関係が壊れる」「クレームになるのが怖い」「でも引き受けたら自分が潰れる」——その板挟みの苦しさは、私自身も何度も経験してきました。

この記事では、そのまま使える「線引き説明文例」と「業務外依頼への断り方テンプレ」を、現場のリアルな視点で丁寧にまとめましたので、参考にしていただける部分があれば幸いです。

一般的な情報+筆者の個人的な経験・感想を含みます。医学的・法的助言ではありません。


過剰要求はなぜ生まれるのか

家族の過剰要求に、多くのケースでは悪意がないとされています。背景の一因として、「情報が届いていない」「制度が見えていない」など、情報不足が挙げられることがあります。

介護を初めて経験する家族にとって、ケアマネジャーの役割は非常に見えにくいものです。「頼れる専門家が来た」という安堵感から、気づかないうちに何でも依頼してしまうのは、ある意味で自然な心理とも言えます。

ここで大切なのは、「悪い家族だ」と判断しないこと。「情報が歪んでいる」だけなら、正しい情報を届ける役割がケアマネにある——私はそう考えるようにしています。そう思えると、少しだけ楽になりませんか。

家族の過剰要求「4分類マップ」で要求の正体を見極める

まず、要求タイプを見極めると対応が格段にラクになります。私が現場で感じてきた4つの分類を、下の表でまとめました。

クリック
分類家族の本音背景にある誤解
①万能期待型「ケアマネなら何とかしてくれる」ケアマネ=何でも屋
②不安暴走型「このままだと大変なことになる」不安=正当な要求
③比較優位型「他の家はやってもらえている」個別対応=標準仕様
④責任転嫁型「判断は全部プロが決めて」決定責任の所在の混乱

参考:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働者のストレス実態調査」

この分類を頭に入れておくだけで、「この方は①万能期待型だな」と少し冷静に見られるようになります。感情で受け取るのではなく、「どのパターンか」を分析する視点が、心の盾になります。


線引き説明文の「黄金フォーマット」

どんな過剰要求にも応用できる、5ステップの基本構造があります。

この順番を守るだけで、「冷たい断り方」にはなりません。むしろ家族から「丁寧に説明してくれた」と感じてもらえることが、私の経験では多かったように思います。

黄金フォーマット:

① お気持ちへの理解を言葉にする

② 制度・契約・役割の事実を簡潔に伝える

③ ケアマネができる範囲を明示する

④ できない理由を「主観なし・制度ベース」で伝える

⑤ 代替案または次の選択肢を提示する

特に重要なのは④です。「私には難しいので」ではなく、「制度上、この役割はケアマネの範囲外とされています」という言い方にすると、あなた個人が拒絶しているのではなく、仕組みの問題として伝わります。家族の怒りの矛先が、あなた個人に向きにくくなる効果があります。

過剰要求パターン別・そのまま使える説明文例集


【パターン①】24時間対応・夜間の連絡を求められる

「いつもお父さまのことを一番に考えておられるのが、よく伝わってきます。そのうえでお伝えしなければならないことがあります。ケアマネジャーの役割として、夜間や緊急時に直接対応することは、制度上できない決まりになっています。ただ、『いざというとき、どこに連絡すればいいか分からない』というご不安は、本当によく分かります。夜間・休日に連絡できる窓口と、緊急時の流れを一緒に整理してお渡しする形で、お力になれればと思います。


【パターン②】医療判断レベルのことを求められる

「ご心配なお気持ちはもっともです。医療的な判断については、ケアマネジャーがお答えすることは制度上できません。ただ、状況を整理して主治医の先生にお伝えするお手伝いは、私の役割としてできます。一緒に確認したい点をまとめて、次の診察に備えませんか。」


【パターン③】本人の意思より家族の安心を優先してほしい

「ご家族として『安全第一で』と考えられるお気持ちは、とても自然なことだと思います。一方で、介護保険のサービスは、できる限りご本人の希望や生活のリズムを尊重しながら組み立てることが基本になっています。『安全』と『ご本人の希望』のバランスを一緒に探していくのが、私の役割です。今日は、ご家族のご不安も伺いながら、どこまでなら安心して見守れるか、一緒に整理させてください。」


【パターン④】ヘルパーや看護師など他職種への介入を求められる

「ご要望はしっかり受け止めました。ただ、それぞれの専門職には、それぞれの役割の範囲があります。私が他職種の業務に直接関与すると、かえってサービス全体の質が下がるリスクがあります。担当のヘルパーさん・看護師さんとの連絡会議の場を設けることはできます。そちらで一緒にご要望を伝える機会を作ってもよろしいでしょうか。」


「将来のトラブルを防ぐ」先手の一言集

💡 場合によっては「良かれと思って引き受ける」がリスクになる理由

実は、ケアマネが何でも代行してしまうことには、見えないリスクがあります。本人の残存能力(自分でできること)が使われなくなり、生活機能の低下につながる可能性があること。また、担当ケアマネが交代したときに、「前の人はやってくれた」とのギャップが生じ、新しい担当者が困難な状況に陥ることもあります。

以下は、先手で伝えておくと後々のトラブルを防げる一言です。

「今は大丈夫でも、状態が変わったとき、同じやり方だとご負担が急に増える可能性があります。そのときに『なぜ誰も言ってくれなかったのか』とならないよう、今のうちから選択肢を一緒に考えておきたいです。」

「ご家族が頑張りすぎて体調を崩されると、お父さまの生活にも直接影響が出てしまいます。ご家族の『限界ライン』も、ケアプランの大切な要素として一緒に考えさせてください。」

これらの文例を参考に、支援経過記録(記録)には「家族の不安に共感しつつ、ケアマネの役割と制度上の限界を説明。代替案として◯◯を提示し、理解を得た」と客観的に記しておくことで、後のトラブル防止にも繋がります。

 業務外依頼を「断る」から「リソースを繋ぐ」へ昇華させる技術

ケアマネジャーとして仕事をしていると、「ついでに市役所まで乗せていって」「買い物も代行して」といった業務外の依頼が舞い込むことがあります。善意で引き受けてしまいたくなる気持ちは分かりますが、安易な「YES」は、実は利用者さまやご家族、そして自分自身にとっても大きなリスクを孕んでいます。

厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」でも、ケアマネジャーの本来業務(アセスメント、プラン作成、モニタリング、調整等)と、それ以外の業務の切り分けが議論されています。業務外の依頼を毅然と断ることは、単なる自己防衛ではなく、利用者さまの「自立支援」を阻害しないためのものです。根拠を持って断ることが、結果として質の高い支援に繋がります。

クリック
業務外依頼の代表例無理に引き受けることのリスクケアマネの本来の役割
書類代行・申請代行記載ミスや期限遅延時の賠償責任のリスク。制度の紹介、申請方法の助言。
家事・金銭管理紛失や盗難を疑われるトラブル、自立の阻害のリスク。適切なサービスの調整、公的制度の紹介。
通院付き添い・送迎事故発生時の保険適用外、損害賠償のリスク。移動支援サービスの選定、医療連携。
家族間トラブルの調停特定の誰かの味方になることによる信頼失墜のリスク。専門家(弁護士等)の紹介、話し合いの場作り。

業務外依頼を断ることは、相手を突き放すことではありません。「その困りごとは、専門外の私より、もっと適したプロがいます」と伝えることで、ケアマネジャーの価値を「何でも屋」から「最適なリソースのコーディネーター(コンシェルジュ)」へと 変化させることができるのです。


業務外依頼への断り方と代替提案テンプレ

「断る」という言葉には、どこか後ろめたさを感じませんか。私はしばらく、そう感じていました。でも今は少し違う考え方をしています。

「断る」のではなく、「最も適した人・場所・制度に繋ぐ」のが、ケアマネの専門性だと。

業務外の依頼が来たとき、それはその家族が「困っている」というサインです。「できません」で終わらせず、「誰ならできるか」を一緒に探す姿勢が、最終的に信頼につながると感じています。

代表的な業務外依頼と「断り+代替提案」テンプレ


【依頼①】病院への付き添い・送迎を求められた

「通院がご不安なこと、とてもよく分かります。ただ、個別の送迎や付き添いは、ケアマネジャーの業務の範囲から外れてしまいます。
代わりに、通院付き添いサービスや、自治体のタクシー券制度が使えないか、一緒に確認させてください。必要であれば、病院側へ事前に情報をお伝えすることもできます。」

代替リソース例: 介護保険の通院等乗降介助 / 自治体の移送サービス / NPO・ボランティア団体


【依頼②】金銭管理・支払い代行を頼まれた

「お金の管理が難しくなってきていることへのご心配は、もっともだと思います。ただ、ケアマネジャーが直接お金を預かったり、支払いを代行したりすることは、トラブル防止の観点から原則として制度上も行わないことになっています。代わりに、日常生活自立支援事業や成年後見制度など、第三者が公的に関わる仕組みがあります。一緒に利用を検討してみませんか。」

代替リソース例: 日常生活自立支援事業(社会福祉協議会)/ 成年後見制度 / 地域包括支援センターへの相談


【依頼③】家族間トラブルの仲裁・説得役を求められた

「ご家族の中で意見が分かれている状況は、本当におつらいと思います。ただ、私がどちらかの味方として入ってしまうと、かえってご家族の関係が難しくなる可能性があります。私の役割は、ご本人の希望とご家族それぞれのご不安を整理して、医師や看護師も交えた場で一緒に話し合う『場づくり』までと考えています。カンファレンスの場を設ける方向で調整してもよろしいでしょうか。」


【依頼④】大掃除・庭仕事など家事代行レベルの依頼

「お困りの状況はよく分かります。ただ、その作業はケアマネの業務ではなく、介護保険のヘルパーサービスの対象外になる可能性があります。シルバー人材センターや、地域の有償ボランティアサービスで対応できる場合がありますので、一緒に確認してみましょう。」「お住まいの地域名+家事代行+福祉」で検索したり、各自治体の「公式HPの探し方」で調べる事もできます。


「自分一人で背負わない」巻き込みフレーズ集

断るとき、自分一人が悪者になる必要はまったくありません。以下のフレーズは、自然に「組織・制度・他職種」を巻き込むための言葉です。

「私一人で判断してしまうと、かえってご迷惑をおかけする可能性があるため、事業所の管理者にも共有したうえでお返事させてください。」

「この件は、主治医や看護師さんの意見も聞いたうえで、一緒に考えたいと思います。」

地域包括支援センターにも相談して、使える制度がないか探してみます。」

これらのフレーズを使うと、「ケアマネが拒絶した」ではなく「チームで検討している」という印象になります。関係を守りながら、自分を守れる言葉たちです。

断り方「タイプ別バリエーション」

同じ内容でも、家族のタイプに合わせて届け方を変えると、受け取られ方がまったく変わります。

クリック
家族のタイプ 断り方のポイント使いやすい冒頭フレーズ
共感型タイプ不安が強い、依存心が強い家族。共感を厚めに、ゆっくりと「お気持ち、本当によく分かります」
論理型タイプ理詰めで来る、納得感を重視する家族。制度・根拠を先に示す「制度上の根拠をお伝えします」
協力型タイプ信頼関係があり、協力的な家族。明るくサラッと代替案へ「それならこちらが一番早いと思います」

断ったあとの関係をどう守るか

断った後が、実は一番大切だと私は感じています。翌日の電話一本で、印象が変わることがあります。

「昨日お話しした件、改めて確認したところ、◯◯という方法が使えそうでした。一度ご説明してもよいですか?」

この一言が言えるかどうかで、「あのケアマネは冷たかった」が「あのケアマネはちゃんと動いてくれた」に変わることがあります。断ることは、関係を壊すのではなく、「本当に必要な支援」を明確にする機会——私はそう考えるようにしています。

ケアマネジャー自身のメンタルを守るために

「いい人でいたい」という欲求は、対人援助職にとって大切な資質ですが、時に自分を追い詰める毒にもなります。断ることへの恐怖を和らげるために、以下の認知行動療法的アプローチを取り入れてみてください。

罪悪感の正体を突き止める:断ったことで誰かが不幸になるのか、それとも自分の「いい人」イメージが崩れるのが怖いだけなのか、自分に問いかけてみましょう。

リフレーミング(言い換え):断ることは「不親切」ではなく、「自立支援のための適切な介入」であると自分に言い聞かせます。

「NO」は「別の選択肢へのYES」:業務外の依頼を断ることで、本来のケアマネジメントに充てる時間(モニタリングや多職種連携)を確保し、より質の高い支援を提供できるようになります。

(※一般的な情報+筆者の個人的な経験・感想を含みます/医学的助言ではありません)


まとめ

この記事では、ケアマネジャーが直面する家族の過剰要求や業務外依頼への対処法について、具体的な文例と共にお伝えしてきました。適切な線引きは、決して相手を突き放す冷たい行為ではありません。むしろ、ケアマネジャーがプロとしての境界線を守ることで、利用者さまやご家族が本来持っている「生きる力」を引き出し、持続可能な支援体制を築くための「誠実な一歩」なのです。

「断り方」に迷ったときは、この記事のテンプレを思い出し、まずは相手の不安に寄り添うことから始めてみてください。あなたは決して一人ではありません。困ったときは、事業所の管理者や地域包括支援センターなど、周囲のリソースをどんどん頼ってくださいね。


本記事は一般的な情報と筆者の個人的な経験・感想に基づいて執筆しています。個別の事例については、所属事業所や地域包括支援センター等にご相談ください。医学的・法的助言ではありません。


コメント

タイトルとURLをコピーしました