GPS徘徊感知機器は介護保険で使える?2026年制度改正の通信機能付き福祉用具の給付範囲のポイントを解説。

職場環境改善

「本内容は2026年の施行を目指す検討段階の情報を含みます。厚生労働省の方針は示されていますが、実際の施行はTAIS(福祉用具情報システム)の改修完了が前提であり、具体的な施行日や細かな運用ルールは「予定」の段階です。最終的な通知内容や自治体の運用により変更される可能性があります。」

今回の「通信機能付き福祉用具の給付拡大」は、日々の業務にも直結する大切な改正だと感じており、丁寧に解説したいと思います。

「最近、利用者さんの家族から”GPSを使って認知症の親を見守りたいけど、保険は使えないの?”と聞かれることが増えました」──これは、ケアマネをしている私自身がよく経験することです。

実は、これまでの介護保険制度では、通信機能が一体化された福祉用具は給付対象外になるケースがほとんどでした。しかし、それがいよいよ変わる見込みです。

厚生労働省が2026年に向けて、GPS機能付きの徘徊感知機器や、車いす・ベッドのバッテリー異常を通知する機能を介護保険の給付対象に加える方針が示されました。

この記事では、ケアマネとして現場目線で、この制度変更の「何が変わるのか」「誰にどんなメリットがあるのか」「注意すべき点は何か」を、できるだけわかりやすくお伝えします。少し複雑な制度の話ですが、最後まで読んでいただければ、きっと「なるほど」と思っていただけると思います。

そもそも「福祉用具の給付」とは?

制度変更の前に、まずは「福祉用具の給付」の基本を確認しておきましょう。ここを押さえておくと、今回の変更がなぜ大きな意味を持つのかが、ぐっとわかりやすくなります。

介護保険制度には、要介護・要支援の認定を受けた方が日常生活で使う用具を、介護保険の給付(=保険を使って安く借りたり買ったりできる制度)で利用できるしくみがあります。

種別内容主な対象用具
福祉用具貸与月々のレンタル費用を保険で賄う車いす、特殊寝台(介護ベッド)、歩行器、 徘徊感知機器、移動用リフトなど
特定福祉用具販売購入費の一部(原則9割)を保険で補助入浴補助用具、腰掛便座、排泄予測支援機器など

出典:厚生労働省「福祉用具貸与」制度概要 / 公益財団法人テクノエイド協会

利用者さんにとっては、費用負担が大幅に軽減されるため、とても重要な制度です。ケアマネとしても、ケアプランに福祉用具を組み込む際に、「これは保険対象か?」を確認するのは日常的な業務です。

「徘徊感知機器」は、以前から貸与の対象品目でした。ただ、通信機能の扱いについて、長年ずっと制約があったんです。それが今回、ようやく見直されます。


これまでのルールと問題点

「なぜ今まで通信機能が給付対象外だったのか」──背景を理解すると、今回の改正の意義がより深く伝わります。現場では、このルールに何度も悩まされてきました。

2015年に設けられた「物理的分離ルール」

2015年(平成27年)の通知改正によって、通信機能を備えた福祉用具の給付には、厳しい条件が課されていました。

📜 2015年改正の条件(旧ルール)

給付対象になるのは、以下のすべてを満たす場合のみ:
① 対象が「認知症老人徘徊感知機器」であること
② 本体部分と通信機能部分が物理的に分離できること
③ 通信機能部分は利用者の自費負担とすること

この「物理的分離」というのが曲者でした。スマートフォンで言えば、「電話機能部分だけを保険で賄い、通信部分(SIM)は自費で払え」というイメージです。

しかし現代のテクノロジーでは、GPS機能や通信機能は本体と一体化して設計されるのが普通です。分離できないと給付対象外になってしまうため、せっかく便利な最新機器があっても、保険を使えないというジレンマが生まれていました。

👩‍🦳家族の声(よくある相談)
先生、スマホで認知症の父の場所がわかるGPS機器があると聞いたんですが、介護保険は使えませんか?毎月の通信料がどうにも高くて…。

👨ケアマネ
こういう相談、本当によく受けます。現行ルールでは「残念ながら保険は使えません」と説明するしかなく、心苦しい思いをしてきました。それが2026年から変わる見込みです。

通信範囲も「居宅内」だけに限定

さらに問題だったのは、通信範囲の制約です。旧ルールでは、徘徊感知機器が対応できる通信範囲は「居宅内」に限られていました。

つまり、認知症の方が家の外へ出てからの位置情報の通知は、給付の枠外でした。徘徊は、まさに家の外で起きる問題なのに、保険対応できるのは「家の中で出ようとした瞬間」だけ、という矛盾があったわけです。

⚠️ 旧ルールの矛盾点

・本体と通信が一体化した最新機器 → 保険対象外
・家の外でGPS追跡 → 保険対象外
・メーカーからも「開発の制約になる」と指摘が相次いでいた
・認知症高齢者の行方不明者数は増加傾向(警察庁統計)


2026年に何が変わるのか

いよいよ核心です。厚生労働省が示した方針を、ケアマネとして正確に読み解きます。「検討会での議論」から「正式な制度変更」までの流れも確認しておきましょう。

検討会での議論から方針決定へ

厚生労働省は、介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会において、貸与などの給付対象とする福祉用具の範囲の拡大に向けた考え方を示しました。

その後の審議を経て、厚労省はこうした方針を社会保障審議会・介護給付費分科会へ報告し、福祉用具情報システム(TAIS)の改修完了に合わせて改正通知を施行する予定と説明しています。

<今回の改正のポイントを一言で>
「物理的に分離できるもの」という縛りをなくし、通信範囲も居宅外まで広げる。テクノロジーの進歩に合わせ、利用者と家族が使いやすい機器を保険給付の対象に加える。

改正通知の具体的な内容

新しい解釈通知の案では、福祉用具の本来機能として通信機能を備えた認知症老人徘徊感知機器及び排泄予測支援機器は、居宅外との通信機能を有する場合についても給付の対象とすることが示されています。

さらに、福祉用具に付属して通信機能を備えた福祉用具については、通信機能により利用者の安心・安全の確保を図る観点から、福祉用具の利用状況の把握ができるもの、または福祉用具の安全な利用に資するものについても給付対象とする方向が示されています。

🗓️【制度改正のスケジュールイメージ図】
2024年 検討会で議論開始

2025年 有識者会議で方針固まる

2026年 TAIS改修完了後、改正通知施行(予定)

※スケジュールは今後変更になる可能性があります。厚生労働省の公式発表をご確認ください。


給付対象になるもの・ならないもの

ここが最も重要な部分です。「何が保険で使えるようになるのか」「逆に何は依然として対象外なのか」──正確に把握しておくと、利用者さんへの説明に迷いません。

新たに給付対象となるもの

新たに給付対象となる予定なのは、利用者が屋外へ携行するタイプの徘徊感知機器で、GPSを活用して認知症高齢者らの位置情報を家族へ通知する機能などが該当する見込みです。利用者の早期発見、安全確保などにつなげる狙いがあります。

厚労省は併せて、車いすや歩行器、ベッドなどに付属してバッテリーの状態、異常・故障、使用状況などを通知する機能も、機器の適切な維持管理に役立つとして給付対象に含める意向を示しました。

  • 屋外携行型・GPS付き徘徊感知機器(認知症高齢者の位置情報を家族へ通知)
  • 排泄予測支援機器(居宅外との通信機能も含む)
  • 車いす・歩行器・介護ベッドのバッテリー状態・異常通知機能(維持管理目的)
  • 福祉用具の利用の有無や利用者の位置情報を介護者に通知するもの
  • 用具の維持管理・修理交換に資する情報を利用者または介護者に通知するもの

引き続き給付対象外のもの

月々の通信料金、モデム・ルーター・スマホ・タブレットの環境整備、アプリのサブスク料金などは、引き続き給付の対象外となる予定です。

また、昨年の検討会で対象候補にあがっていた、車いすや歩行器などに搭載される位置情報の通知機能については、今回の新たな給付対象から除外されました。徘徊の予防や探索などの効果が十分に確認できなかったためで、厚労省は今後の実績や必要性に応じて改めて検討すると理解を求めました。

  • 月々の通信料金・SIM料金(利用者の自費負担のまま)
  • モデム・ルーター・スマートフォン・タブレットなどの通信環境整備費
  • アプリのサブスクリプション料金
  • 車いす・歩行器に搭載される位置情報通知機能(効果の確認が不十分として除外)
機能・費用の種類給付対象(予定)備考
GPS付き屋外型徘徊感知機器(本体)⭕ 対象に追加2026年改正後
徘徊感知機器(居宅外への通信)⭕ 対象に追加従来は居宅内のみ
ベッド・車いすのバッテリー異常通知機能⭕ 対象に追加維持管理目的に限る
排泄予測支援機器(居宅外通信含む)⭕ 対象に追加2026年改正後
月々の通信料金・SIM❌ 対象外のまま利用者が自費で負担
スマホ・タブレット等の端末費❌ 対象外のまま利用者が自費で負担
車いす・歩行器の位置情報通知機能❌ 今回は除外今後の実績次第で再検討

出典:厚労省検討会資料をもとに作成


誰に、どんなメリットの可能性がある?

制度改正は「誰かの生活が少しラクになる」ために行われます。利用者さん、ご家族、そして現場のケアマネそれぞれにとってのメリットを、具体的に考えてみましょう。

🧓 利用者さんへのメリット(予定)

  • 最新のGPS機器を保険で使える
  • より安全な外出が可能に
  • 機器の故障を早期に察知できる
  • 在宅生活の継続を支援

👨‍👩‍👧 ご家族へのメリット(予定)

  • GPS機器の費用負担が軽減
  • 遠くにいても位置確認ができる安心感
  • 機器の異常に気づきやすくなる
  • 介護の不安が少し和らぐ

📋 ケアマネへのメリット(予定)

  • より多くの見守り機器を提案できる
  • 家族への説明の選択肢が増える
  • テクノロジー活用のケアプランを作りやすい
  • 利用者のQOL向上に貢献できる

🏭 福祉用具メーカーへのメリット(予定)

  • 通信一体型製品の開発がしやすくなる
  • 市場拡大の可能性
  • より使いやすい機器を開発できる
  • 日本の介護テクノロジーが発展

特に「認知症高齢者の行方不明問題」への効果

警察庁のデータによると、認知症による行方不明者の届け出件数は年々増加傾向にあり、社会的な課題となっています。今回の改正により、GPS付き徘徊感知機器が保険で使いやすくなることは、この問題の解決策の一つになり得ると私は感じています。

GPS機器を自費で使い続けるのは、経済的にも精神的にも大変なことです。保険が使えるようになれば、少しでも多くのご家族が安心できると思うと、この改正方針を心から歓迎したいです。

ℹ️ 「区分要件」が廃止される意義

これまでは、通信機能の部分が物理的に区分できる場合に限り給付対象とする「区分要件」が設けられており、別の機能が加わると用具の価格が上がり給付費が増大しかねないとの考え方がありました。また、こうした規制が技術開発の制約につながるとの指摘もあり、福祉用具開発メーカーから見直しを求める声も上がっていました。
今回の改正でこの縛りが緩和されることで、より使いやすい機器の開発が促進されると期待されています。


ケアマネが知っておくべき実務ポイント

制度が変わっても、現場で使えなければ意味がありません。ケアマネとして押さえておきたい実務上の注意点を、正直にお伝えします。制度の恩恵を最大限に活かすために、一緒に考えていきましょう。

改正通知の施行タイミングを確認しよう

厚労省は、「福祉用具情報システム(TAIS)の改修の完了に合わせ、改正通知を施行する予定」と説明しています。つまり、「2026年から即適用」ではなく、TAISの改修完了が前提です。

実際にどの機器が給付対象になるかは、今後の通知や事務連絡で明確になります。焦らず、厚労省の公式発表や所属する事業所・保険者からの情報を待つ姿勢が大切です。

📌 ケアマネが今すぐできること

① 厚労省の最新通知(老健局)を定期的にチェック
② 地域の保険者(市区町村)からの情報を逃さない
③ 担当の福祉用具業者に「新たな給付対象になった機器はあるか」を確認する
④ 認知症の利用者さんのご家族に、「見守り機器の給付が拡大予定」と事前に伝える

「通信料は自費」の説明を忘れずに

大切なことは、機器本体は保険給付の対象になっても、毎月の通信料金は依然として利用者の自費だという点です。

ご家族が「保険で全部まかなえる」と誤解しないよう、ケアマネとして丁寧に説明する必要があります。月々の通信料金の目安も一緒に伝えられると、より親切でしょう。

⚠️ 誤解されやすい点

✗ 「GPS機器が使えるようになった=全部タダ」ではありません
✓ 「機器本体の貸与費用」は保険給付の対象になる(見込み)
✓ 「通信料金・スマホ代・アプリ代」は利用者の自費負担のまま

※制度の詳細は、今後の公式通知でご確認ください

TAISとケアプランの整合性を確認

福祉用具貸与は、TAISに登録された製品が対象です。新たに給付対象になるGPS付き機器なども、TAISへの登録が必要になります。

ケアマネとしては、ケアプランに福祉用具を位置づける際に、担当の福祉用具専門相談員と連携して「その機器がTAISに登録されているか」を確認する習慣が大切です。

今後のQ&A・事務連絡に注目

厚労省は今後、通知の改正とあわせて事務連絡やQ&Aなどを発出し、現場の関係者に細部を周知する考えです。

このQ&Aが出たタイミングが、実際の現場対応の出発点になります。「通知だけ読んでもよくわからない」という制度あるあるは、Q&Aで解消されることが多いので、見落とさないようにしましょう。

📋【ケアマネの実務フロー(イメージ)】
改正通知を確認 → 地域の保険者に問い合わせ
→ 福祉用具業者と連携 → TAIS登録確認
→ ケアプランへ組み込み → ご家族へ丁寧に説明


現場からの視点と今後の展望

制度は「答え」ではなく、「出発点」です。今回の改正がどんな未来につながるのか、ケアマネとして感じていることをお伝えします。介護の現場は、テクノロジーとともに確実に変わり始めています。

テクノロジーと介護の融合が加速する

今回の改正は、「介護とテクノロジーの壁が一つ取り除かれた」という意味で、とても重要だと私は感じています。

介護ロボットやAI・IoT機器の普及が進む中、これまでの制度は「技術の進歩に追いついていない」と言われ続けてきました。利用者・家族にとって便利な通信機能を備える機器が増えていること、スマートフォンの普及で利便性が上がっていることなどを踏まえて、厚労省も議論を進めてきました。

今回の規制緩和によって、メーカー各社がより使いやすい見守り機器や管理機器を開発・投入しやすくなると期待されます。

「除外」された機能も今後の可能性あり

今回、車いすや歩行器に搭載される位置情報通知機能は給付対象から除外されました。理由は、徘徊の予防・探索への効果が十分に確認できなかったため、とされています。

しかし、「今後の実績や必要性に応じて改めて検討する」とも示されています。現場でのデータが積み重なれば、将来的に対象が広がる可能性もゼロではありません。

制度はいつも「一気に全部変わる」わけではありません。今回の改正も「第一歩」だと思っています。現場のケアマネや支援者が、新しい機器の使い方や効果を記録として積み上げていくことが、次の改正につながっていくんだと感じています。

ケアマネのスキルがより問われる時代へ

テクノロジーの活用が広がるほど、「どの利用者さんに、どの機器が合うか」を的確に判断するケアマネの力が重要になります。

機器を提案するだけでなく、ご家族のITリテラシーや通信環境、費用負担能力なども含めて総合的にアセスメントすること。それがこれからのケアマネに求められる姿の一つかもしれません。

💡 ケアマネとして活かせる視点

・利用者・家族のニーズを丁寧にヒアリングする
・スマートフォンの使用状況・通信環境を確認する
・月々の通信コストも含めたトータルの費用を一緒に試算する
・テクノロジーが苦手なご家族には、使い方サポートも視野に入れる
・制度改正の情報を常にアップデートしておく


まとめ

最後に、今回お伝えしてきた内容を整理します。「難しかった」と感じた方も、ここだけ読んでいただければ大丈夫です。

📌 この記事のまとめ

  • 厚労省は、通信機能付き福祉用具の給付対象を2026年に拡大する方針の見込みです
  • 新たに給付対象になるのは、GPS付き屋外型徘徊感知機器(本体部分)と機器のバッテリー異常通知機能などの予定
  • これまでの「物理的分離ルール」と「居宅内通信のみ」という制約が緩和・廃止される
  • 月々の通信料金・スマホ代・アプリ代は引き続き自費。利用者への説明が重要
  • 実際の施行はTAISシステムの改修完了後。今後の通知・Q&Aに注目
  • 車いす・歩行器の位置情報通知は今回は対象外。今後の実績次第で再検討
  • ケアマネには「どの機器が誰に合うか」を総合的にアセスメントする力が求められる

制度が変わることは、現場にとって「また覚えることが増えた」と感じることもあるかもしれません。でも見方を変えれば、利用者さんやご家族に提案できる選択肢が増えたということでもあります。

私自身、「保険が使えないから」と諦めさせてきた提案が、これからは「使えるかもしれません」に変わる。それだけで、少し気持ちが明るくなります。

介護の制度は、ゆっくりでも確実に変わり続けています。私たちケアマネも、その変化に乗り遅れないよう、一緒に学んでいきましょう。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。「なんとなくわかった」「安心した」と思っていただけたなら、それだけで嬉しいです。制度はむずかしいですが、一歩ずつ一緒に理解していきましょう。またどこかでお会いしましょう!

🔗 参考・情報源

・厚生労働省「令和7年度介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会(第1回)資料4
 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001501818.pdf

※一般的な情報+筆者の個人的な経験・感想を含みます/医学的助言ではありません。
本記事の内容は、公開時点での情報をもとにしており、今後の制度改正・通知により変更になる可能性があります。最新の情報は、厚生労働省・各地域の保険者(市区町村)の公式発表にてご確認ください。本記事は特定の商品・サービスの効果を保証するものではなく、行動の選択肢の一つとしてご参照ください。YMYLに該当する判断は、必ず専門家・担当機関にご相談ください。

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