特養の人手不足「縮小検討」8.4%は何を意味するか?:WAM調査で見る「平均不足5.5人」と現場が取るべき具体策

職場環境改善
目次
  1. 特養の不足人員が急増した衝撃の真実
  2. 過去最高を更新した事業の「縮小・廃止」検討
  3. なぜ人が集まらないのか?他産業との賃金格差
  4. ICTと介護ロボットが切り拓く「生存戦略」
  5. 外国人人材の活躍と現場に吹く「新しい風」
  6. 外国人雇用で職員の意欲が向上した成功例
  7. 外国人の人材・介護助手雇用の「光と影」:導入を阻む4つの壁
  8. ケアマネの視点を活かす!「働く場所の選び方」
  9. 結び:介護の未来を、共に優しく歩むあなたへ

こんにちは。毎日、目の前の方々のために心を尽くされているあなたへ。昨今の特養の人手不足を踏まえると「最近の特養、なんだか大変そうだな」「自分の将来も大丈夫かな」と、言う思いを抱えている方がいるかもしれません。

実は、最新の公的データである独立行政法人福祉医療機構(WAM)の調査で、特別養護老人ホームの現状が示されています。特養の「人手不足」が単なる「忙しさ」を超え、一部の施設ではついに事業を畳むかどうかの瀬戸際に達していると言うデータが読み取れるかと思います。

この記事では、データという「数字」の裏にある「現場の痛み」を、同じケアマネの視点で解き明かしていきます。この記事を読み終える頃には、現状への理解とともに、「自分はどう備え、どう歩むべきか」という前向きな納得感を得ていただけるかと思います。

(※一般的な情報+筆者の個人的な経験・感想を含みます/医学的助言ではありません)


特養の不足人員が急増した衝撃の真実

現在、全国の特別養護老人ホーム(特養)が直面している状況は、過去に例を見ないほど深刻なものとなっています。最新の調査によれば、職員が「不足している」と回答した施設は全体の64.0%に達しました。

数字上は前年度より微減したように見えますが、実は不足している施設における「穴」は深まっています。人員不足を感じている施設での平均不足人数は、前年度の3.6人から一気に「5.5人」へと急増したのです。

こうした数字は、一度欠員が出ると負担増→離職という『負の連鎖』が起こりやすい構造を示唆しています。私たちケアマネジャーがどれだけ連携しようとしても、受皿となる特養の現場がここまで疲弊しているという事実は、地域福祉の基盤そのものを揺るがす衝撃的なデータと言えるといった見方もできます。

不足人数「5.5人」が現場にもたらす限界

平均5.5人の欠員とは、日々のシフト表に常に穴が開いている状態を意味します。現場では「時間外労働を増やして対応(52.7%)」や「シフトの変更・調整(41.3%)」が常態化しています。

地域格差が生む「派遣すら呼べない」現実

都市部(1〜3級地)では67.1%が派遣職員を活用していますが、地方では30.0%に留まっています。地方ではそもそも派遣会社自体が少なく、外部リソースに頼ることさえ困難な孤立無援の状況が伺えます。


過去最高を更新した事業の「縮小・廃止」検討

人員不足の深刻化は、ついに施設の「存続」という究極の選択を経営者に迫る段階にまで達してしまいました。今回の調査で最も注視すべきは、不足人員への対応策として「事業の縮小・廃止を検討中」とした施設が8.4%と過去最高を記録したことです。

この割合は、2022年度の4.6%から毎年着実に上昇し続けています。特に「その他(過疎地等)」の地域では10.3%、つまり10施設に1施設が「もう維持できないかもしれない」と悩んでいるのが現状です。

ケアマネとして地域資源をマネジメントする立場からすると、長年連携してきた特養が突然消えてしまうリスクは、利用者様の活の継続が困難になる懸念があります。しかし、経営側も「安全なケアを担保できない」という苦渋の決断を下さざるを得ないほど、崖っぷちに立たされているのです。

人口減少地域で加速する福祉の「撤退」

過疎地における10.3%という数字は、地方における介護インフラの供給体制の維持が極めて困難な局面を迎えていることを示唆しています。これは単なる経営難ではなく、地域の福祉供給体制そのものが危機に瀕しているサインです。

受入れ制限という「声なき経営危機」

すでに一部の施設では、新規の利用者受入れを制限しており、特養本体で3.7%、併設事業で5.1%が苦肉の策として門戸を閉ざしています。これは待機者問題の深刻化に直結する深刻な事態です。


なぜ人が集まらないのか?他産業との賃金格差

特養がここまで追い詰められている根本的な原因は、どこにあるのでしょうか。調査によると、人材確保を困難にしている最大の要因は「他産業より低い賃金水準」であり、77.9%もの施設がこの壁を挙げています。

この数値は前年度から12.2ポイントも急上昇しています。物価高騰を背景に、飲食店や物流、ITなどの他産業では大幅な賃上げが進んでいます。一方で、公定価格(介護報酬)に依存する特養は、柔軟に価格転嫁ができず、人材争奪戦で完全に取り残されているのです。

また、「地域における労働人口の減少」を挙げる施設も62.7%に達しています。特に地方では、そもそも「働ける年齢の人」が物理的にいなくなっており、求人を出しても応募がゼロという施設が珍しくありません。この構造的な欠陥は、個々の施設の努力だけで解決できる範囲を完全に超えてしまっています。

採用コストの増大が経営をさらに圧迫

正規職員1名を採用するために支払う紹介会社への手数料は、平均で91.2万円に達しています。この多額のコストを払いながらも、職員が定着しないという悪循環が経営をさらに苦しめています。

処遇改善加算の「限界」を直視する

2024年度のプラス改定があったものの、他産業の賃上げスピードには追いつけていません。現場からは「自助努力ではもはや困難」という悲鳴のような意見が多く寄せられています。


ICTと介護ロボットが切り拓く「生存戦略」

暗い話題が続く中で、唯一と言ってもいい希望の光となっているのが、テクノロジーの活用です。調査では、ICT機器を導入している施設で「職員の負担が減った」と回答した割合が72.2%に達しました。

特に「介護ソフト」は95.1%、「タブレット端末」は75.6%と、標準装備に近い勢いで普及しています。また、離床センサーなどの「見守り機器」も70.6%の施設が導入しており、夜勤の負担軽減や事故防止に大きな成果を上げています。

介護ロボットについても、「移乗介助ロボット」や「見守り・コミュニケーションロボット」の導入が進んでいます。導入した施設の82.8%が「職員の負担軽減」に効果があったと実感しており、機械は冷たいという偏見を覆し、「職員に笑顔を戻すための道具」として現場に定着しつつあります。テクノロジーは、限られた人員で「質」を落とさないための、必須のパートナーとなりつつあるのです。

記録業務の効率化がもたらす「心の余裕」

介護ソフトとタブレットの連携により、転記ミスが減った施設は22.3%に上ります。この余白が、利用者様との「対話」や「丁寧なケア」の時間へと還元されています。

ICT導入を阻む「コストとリテラシー」の壁

一方で、未導入の施設の8割以上が「導入費用が高い」ことを理由に挙げています。また、「職員が使いこなせるか不安」という心理的なハードルも、依然として高い状況です。


外国人人材の活躍と現場に吹く「新しい風」

深刻な人員不足を補うだけでなく、現場に活力と多様性をもたらしているのが外国人人材の存在です。現在、特養の65.1%が外国人を雇用しており、この割合は年々増加傾向にあります。

受け入れ形態としては「特定技能1号(42.5%)」が主流となりつつあり、次いで「技能実習(19.2%)」となっています。実際に雇用している施設からは「労働力の確保」という面だけでなく、「勤務意欲が高い(53.4%)」「施設の雰囲気が明るくなる(26.8%)」といった、資質面や情緒面でも高い評価が寄せられています。

ある現場では、一生懸命に日本語で語りかける外国人スタッフの姿に、日本人職員が「忘れていたケアの初心」を思い出したという素敵なエピソードもあります。言葉や文化の壁を乗り越え、共に支え合う姿こそが、これからの日本の介護現場が目指すべき「共生」の形なのかもしれません。

中長期的な担い手として期待される「特定技能」

以前の技能実習に比べ、より専門性が高く中長期的な雇用が可能な「特定技能」への移行が進み、現場の主戦力として定着し始めています。

教育体制の整備が「win-win」の関係を作る

日本語指導や文化理解の研修を丁寧に行っている施設ほど、外国人スタッフの満足度も高く、離職率が低く抑えられているという傾向が見て取れます。


外国人雇用で職員の意欲が向上した成功例

外国人人材の雇用は、不足人員(平均5.5人)を埋めるための「数」の確保だけでなく、「一生懸命働く姿」を通じた現場のモラールアップ(士気向上)という大きな付加価値を生んでいます。(※一般的な情報+筆者の個人的な経験・感想を含みます/医学的助言ではありません)

数値で見る「意欲向上」の裏付け

外国人人材を雇用している施設へのアンケート(n=665)によると、雇用によるメリットとして以下の項目が挙げられています。

•勤務意欲の高い人材を確保できる:53.4%
•他職員の資質向上:32.8%
•施設の雰囲気が明るくなる:26.8%
•多文化交流につながる:29.2%

これらのデータは、既存の日本人職員に対して「良い意味での刺激」や「業務への意識変化」をもたらしていることを示唆しています。

具体的な成功エピソード

現場での成功事例として、以下のような変化が報告されています。

•「初心」を思い出すきっかけ: 懸命に日本語で入居者に寄り添う姿を見て、日本人職員が「ケアの初心」を思い出し、チームの一体感が高まる。という事例があります。

•コミュニケーションの活性化: 外国人スタッフがもたらす明るい雰囲気や多文化交流が、閉鎖的になりがちな介護現場に新しい風を吹き込み、施設全体の活気が増したと評価されています。

•教育を通じたスキルアップ: 外国人スタッフを受け入れるために、日本人職員が指導方法や業務マニュアルを見直す過程で、「教える側」の専門性や責任感が高まるという相乗効果も生まれています。

成功を支える共通点

意欲向上に成功している施設には、共通した取り組みが見られます。

•中長期的なキャリア支援: 技能実習だけでなく、より専門性が高く長期雇用が期待できる「特定技能1号」(現在、受入れ形態の42.5%で最多)への移行を支援することで、スタッフの定着と意欲維持を図っています。

•丁寧な教育・フォロー体制: 日本語能力や文化の違いに対する不安を解消するため、丁寧な教育体制を構築している施設ほど、外国人スタッフの満足度が高まり、それが日本人職員への良い影響(資質向上など)として還元されています。


外国人の人材・介護助手雇用の「光と影」:導入を阻む4つの壁

人手不足解消の切り札とされる外国人の人材や介護助手の活用ですが、その裏には経営を圧迫するコストや現場の疲弊、制度上の不安定さといった「無視できない代償」が存在します。

外国人人材の導入における多角的なハードル

外国人人材の雇用は、労働力の確保と引き換えに、以下の4つの大きな負担を施設に強いています。

  • 経済的コスト: 雇用を躊躇する最大の理由(54.0%)は、居住場所の確保や資格取得費、紹介会社への手数料といった多額の費用負担です。
  • 現場の教育負荷: 教育体制の不足(48.2%)が深刻です。特に人手不足の現場では、既存職員が教育に追われることで疲弊し、日本人職員の離職を招くという本末転倒なリスクも孕んでいます。
  • コミュニケーションと文化の壁: 言語や文化の違いによるトラブル、入居者・家族の理解を得るための調整など、心理的・時間的コストが発生します。
  • 制度の不安定さと流出リスク: 在留期間の制限(特定技能は通算5年など)により、熟練した頃に帰国してしまう制度上の制約があります。また、SNSを通じた好条件の求人に誘われ、他県へ突然転職してしまう定着の難しさも報告されています。

介護助手の活用における管理上の課題

周辺業務を担う介護助手(主に60歳以上のシニア層)の活用にも、特有の難しさがあります。

  • タスクシフトの困難さ: 専門職と助手の業務範囲を明確に分ける調整が難しく、役割が曖昧になると現場が混乱します。
  • シニアマネジメント: 助手の60.4%が60歳以上であるため、健康管理への配慮や、若手リーダーによる年上スタッフへの指導といった、デリケートな人間関係の構築が求められます。
  • ケアの連続性: 業務を分業化することで、情報共有の手間が増え、ケアの質を維持するための新たな仕組みづくりが必要になります。

経営・現場が直面するジレンマ

調査では活用施設の95.3%が労働力確保の効果を実感していますが、実態は「人手が足りないから入れたい。しかし、入れるための教育やコストを捻出する余裕がない」という過酷なジレンマに陥っています。

「数」の確保だけに目を向けるのではなく、導入後の教育・マネジメントコストをいかに経営に組み込むかが、成功と失敗を分ける境界線となっています。


ケアマネの視点を活かす!「働く場所の選び方」

さて、ここまで特養の厳しい現実を見てきましたが、介護の現場で働く私たちは、どう自分自身を守り、歩んでいけばいいのでしょうか。まずお伝えしたいのは、今の仕事がしんどいのは「あなたの力不足」ではなく、主な要因の一つは、5.5人もの欠員が続く『構造的な問題』にある場合が多い、ということです。

私たちケアマネジャーには、地域の福祉資源を評価するスキルが備わっています。その「目」を、自分自身の職場選びにも活用してほしいのです。他産業との賃金格差を埋めるのは難しいですが、例えば「処遇改善加算」を最大限に取得し、「使途が職員にわかりやすく説明されているか」「どのように還元されているかが共有されているか」。あるいはICT投資を行い、職員の腰痛や残業を減らそうと努力しているか。

こうした「職員を大切にする意思」がある施設は、たとえ人員不足であっても、笑顔が消えません。自分をすり減らして「縮小・廃止」を待つのではなく、ケアマネとしての専門性を正しく評価し、持続可能な働き方を提案してくれる場所を探すことは、決して自分勝手なことではありません。あなた自身が幸せでなければ、質の高いケアは提供できないのですから。

良い職場を見抜く!3つの重要チェック項目

  • ICTの活用度: 業務効率化に投資しているか(職員の負担軽減への姿勢)。
  • 加算算定の積極性: 処遇改善加算(Ⅰ)などをしっかり取得しているか。
  • 離職率の透明性: 3年未満の離職を減らすための具体的な取り組みがあるか。

ケアマネ資格を活かした「多様なキャリア」

施設ケアマネだけでなく、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターなど、ケアマネの需要は多岐にわたります。自分の気質に合ったフィールドは必ず存在します。


賢いキャリア選択のすゝめ

もし、今の職場で「もうこれ以上は無理かも」と心が折れそうになっているなら、一度立ち止まって外の世界に目を向けてみてください。転職は決して逃げではなく、新しい自分を見つけるための「ポジティブな選択」です。

例えば、「介護専門の転職エージェント」を活用すれば、今回ご紹介したような「不足人員の実数値」や「ICTの導入状況」など、自分では聞きにくい裏側の情報を事前に教えてくれることがあります。また、「資格取得支援制度」が充実している施設を選べば、働きながらケアマネの更新研修や介護福祉士の勉強を「持ち出しゼロ」で進めることが可能です。「転職は大きな決断であり、メリット・デメリットをよく検討したうえで、信頼できる第三者(上司・同僚・専門家)にも相談しながら進めてください。」

さらに、最近では「スポットワーク(単発バイト)」アプリを利用して、数日間だけ別の施設を体験してみるという方法も広がっています。実際に現場の空気を感じてから、「ここなら安心して長く働けそうだ」と確信を持ってから正社員を目指すことができます。臆病でも、めんどくさがりでも大丈夫。あなたに合った一歩を、便利なツールを使って賢く選んでみてください。



結び:介護の未来を、共に優しく歩むあなたへ

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。特養の「欠員5.5人」や「廃止検討8.4%」という数字は、確かに厳しく、時には悲観的になってしまうかもしれません。しかし、その厳しさを認め、知恵を絞り、テクノロジーや多様な仲間を迎え入れながら、一歩ずつ前に進んでいる施設もたくさんあります。

あなたが今日、誰かに向けた優しい言葉や、丁寧なケアは、どんな統計データよりも尊い価値があります。その尊い仕事を続けていくために、まずはあなた自身を一番大切にしてあげてください。時には休み、時には頼り、自分に合った環境を求める勇気を持ってください。

私のこの文章が、あなたの抱える不安を少しでも和らげ、明日の活力になることができれば、これ以上の幸せはありません。私たちは、この時代を共に生き抜く、大切な仲間です。あなたの歩む道が、安心と優しさに包まれるよう、心から応援しています。またいつでも、この場所へ立ち寄ってくださいね。


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